イオランタ
◆
(Sr)レネ王の娘:生来盲目の王女。清らかな心の美しい人。
レネ王
◆
(B)プロヴァンス王:イオランタの父。人間性豊かで高潔な人物。
エブン=ハキヤ
◆
(Br)ムーア人の名医:イスラムの賢者。〔チャイコフスキーは、トルコで聞いたメロディーを彼のモノローグに用いた〕
ボデモン
◆
(T)ブルゴーニュの騎士(伯爵):ロベルトの友人。清らかで心の美しい女性に憧れている夢想家。
ロベルト
◆
(Br)ブルゴーニュ公爵:イオランタの婚約者。雄々しく情熱的だが、思慮深く、皮肉屋の一面もある。
マルタ
◆
(A)イオランタの乳母 ベルトランの妻:イオランタが赤ん坊の時から仕えている。
ベルトラン
◆
(B)門番 マルタの夫:長年、城を守っている。
アリメリク
◆
(T)レネ王の新任の従者:初めて城に来た。
ブリギッタ
◆
(S)イオランタの友人:王の命令に従い、遊び相手を務め、イオランタに盲目を悟られないようにいつも気を配っている。
ラウラ
◆
(Ms)イオランタの友人:
原 作:
ヘンリク・ヘルツの戯曲『ルネ王の娘』
初 演:
1892年12月18日 サンクトペテルブルク・マリインスキー劇場
作 曲:
ピョートル・チャイコフスキー
台 本:
モデスト・チャイコフスキー
あらすじ
16世紀、南フランスのとある山中、プロヴァンス王レネの別邸である小城には一人娘のイオランタ姫が住んでいる。イオランタは生まれつきの盲目だが、彼女自身はそのことを知らされていない。レネ王の強い希望で、彼女に気づかれぬよう周囲の人々が言動を配慮してきたからだ。さらに、「小城に立ち入る物は即刻死刑」という命令が下されているので、城に侵入する者はなく、外部にもこの秘密は漏れておらず、世間ではイオランタはスペインの修道院に預けられていることになっている。
<前奏曲>
レネ王の依頼で、ムーア人の名医エブン=ハキアが、遠路、この隠れ城へやって来る。イオランタ姫の目を治すためである。レネ王は、一行が間もなく城へ到着することを知らせるよう、早馬の遣いを出す。
<第1~3景>
花に囲まれた美しい庭園。乳母や友人たちに囲まれて平穏な日々をすごしているイオランタ姫。
でも時折得体の知れない不安に襲われて気持ちが沈む。友人たちは歌を歌い、踊りを踊って慰める。
やがて疲れて眠り始める姫に、乳母や女たちは優しく子守歌を歌う。
<第4景>
レネ王の使いが城へ到着し、次いで王とエブン=ハキアもやって来る。眠っている姫をエブン=ハキアが診断している間に、王は心の内の苦悩と不安を切々と歌い上げる(レネ王のアリオーソ)。
<第5景>
診断が終わって病状を告げるエブン=ハキア。「治る可能性はあるが、姫自身が盲目であることを知り、自身が治療を切望することが条件」と告げると、レネ王は真実を暴露するのは残酷で絶対にできないと拒否する。エブン=ハキアは「生きとし生けるものには皆、肉体世界と精神世界とがあり、肉体の不備を治すには、精神つまり理性がそれを認識することが必要だ」と説く(エブン=ハキアのモノローグ)。
王の悩みは頂点に達するが、やはり姫には宣告できないと決断する。
<第6景>
小城のある山奥に二人の青年が迷い込む。ブルゴーニュ公爵ロベルトとその友人のヴォルデモン伯爵だ。実はロベルトは、幼い頃に親同士が交わした約束によってイオランタ姫と婚約しているが、一度も姫に会ったことがなく、今では別にマチルダという恋人がいる。一方ヴォデモンはまだ恋愛経験のない純粋な青年だ、「立ち入る者は即死刑」という立て札に興味を持った二人は、小城の庭園に忍び込み、眠っているイオランタ姫を見かける。あまりの美しさに、逆にロベルトは魔女かもしれないと怯える。
<第7景>
物音に目覚めるイオランタ。止めるロベルトを振り切ってヴォデモンは姫に近づくロベルトはヴォデモンが魔力にかかったと思い込み、ヴォデモンを残して自分の連隊を呼びに引き返す。酒をもてなす純粋で美しいイオランタに恋心を燃やすヴォデモン。姫も体験したことのない感情を覚え、ヴォデモンに惹かれていく。別れ際、思い出に庭に咲くバラをくださいと求めた時、姫が盲目であることに気づき、さらには、そのことを姫自身が知らないと分かる。闇の世界に生きていて光の存在を知ろうともしない姫に、光の世界の素晴らしさを歌い上げる(ヴォデモンのアリオーソ)。
<第8景>
ベッドで眠っていたはずのイオランタ姫の姿が見えず、慌てる王や召使たち。庭で見知らぬ若者と会話している姫を見つけて、王は遂に姫が光の存在を知ってしまったと悟る。王はようやく姫を完治させる決心がつき、イオランタ自身が手術を強く望むように、妙案を思いつき、「侵入者は処刑するという決まりだが、イオランタの目が見えるようになれば罪を赦そう」とヴォデモンに宣告する。見えるということがどういうことかまだよく分からない姫だが、愛し始めたヴォデモンの命が助かるならと、「どんな痛みにも耐えます」と力強く手術への覚悟を表明する(イオランタのアリオーソ)。
<フィナーレ>
別室で手術している間、レネ王はヴォデモンに本心を話し、騙してすまなかったと謝罪する。ヴォデモ
ンは治療が成功しようがしまいが、イオランタ姫と結婚したいと告白するが、既に婚約しているのでそれは無理だと断られる。そこへ、ヴォデモンを救出しにロベルトが兵を率いて到着。ヴォデモンはようやく、目の前にいる老人がレネ王で、盲目の乙女はイオランタ姫で、婚約者がロベルトであることを知る。別の恋人がいるロベルトは婚約解消を申し出、王は快く承諾し、イオランタ姫とヴォデモンとの結婚を許可する。そこへ、無事に治療の終わったイオランタとエブン=ハキアが戻ってくる。初めて見る青空に感動するイオランタ。最後は、光への賛歌を全員で高らかに歌って幕となる。
(訳 一柳 富美子)
ページのトップに戻る
拡大地図
Copyright (C) 2010 TAKAKO HIRAOKA All Rights Reserved.